土から生まれた、優しくどこか懐かしい音色の楽器「オカリナ」。アニメやゲームのBGMでその音色を聴いて、興味を持った方も多いのではないでしょうか?
「楽器って難しそう…」「何から始めたらいいかわからない」そんな風に思っている方もご安心ください。オカリナは、初心者の方でも比較的気軽に始められる楽器なんです。
この記事では、特定の商品をおすすめするのではなく、オカリナという楽器そのものの魅力や、始め方、上達のコツ、メンテナンス方法まで、お役立ち情報をとことん詰め込みました。宣伝は一切ありません。純粋に「オカリナを始めてみたい!」「もっと上手になりたい!」というあなたを応援するための、いわば「オカリナの教科書」です。
この記事を読み終える頃には、オカリナに関する基本的な知識が身につき、楽器店へ足を運んだり、練習を始めたりする第一歩を踏み出せるはず。さあ、一緒にオカリナの奥深い世界を覗いてみましょう!
オカリナってどんな楽器?その魅力に迫る
まずは、オカリナがどんな楽器で、どんな魅力を持っているのかをご紹介します。この楽器の良さを知れば、きっとあなたも吹いてみたくなるはずです。
素朴で優しい音色
オカリナの一番の魅力は、なんといってもその温かみのある音色です。土を焼いて作られた楽器ならではの、素朴で優しい響きは、聴く人の心をそっと包み込んでくれるような感覚があります。リコーダーやフルートのような金属的・直線的な音とは違い、少しだけ息の音が混じった「ほっこり」するサウンドが特徴。この音色に癒されるという方も少なくありません。
静かな公園でポロンと吹けば、まるで自然と一体になったような気分に。お家で吹けば、いつもの部屋が特別な空間に感じられるかもしれません。この唯一無二の音色こそが、多くの人を惹きつけてやまないオカリナの核心部分なのです。
手軽に始められる親しみやすさ
「楽器を始めたいけど、高そう…」と躊躇してしまうこと、ありますよね。その点、オカリナは比較的リーズナブルな価格帯から手に入れることができます。もちろん、プロが使うような高価なものもありますが、初心者が始める一本としては、数千円程度から見つけることが可能です。
また、楽器の構造がシンプルで、音を出すこと自体はそれほど難しくありません。リコーダーのように息を吹き込めば、とりあえず音は出ます。正しい音程で、美しい音色を出すには練習が必要ですが、「音を出す」という最初のハードルが低いのは、初心者にとって嬉しいポイントですよね。
持ち運びが楽ちん!どこでも楽しめる
オカリナは、小さくて軽いのも大きな魅力です。手のひらに乗るくらいのサイズなので、専用のケースに入れてもカバンにすっぽり収まります。ギターやキーボードのように、持ち運びに気合を入れる必要がありません。
天気の良い日に公園に持っていって練習したり、旅行先に持っていって思い出の曲を吹いてみたり。キャンプに持っていけば、焚き火を囲みながらの演奏なんていうのも素敵ですね。いつでもどこでも、音楽を気軽に持ち運べるフットワークの軽さは、オカリナならではの特権と言えるでしょう。
奥深い表現力
手軽に始められる一方で、オカリナは非常に奥深い表現力を持った楽器でもあります。ただドレミを吹くだけでなく、息遣いの強弱やスピード、指使いのテクニックによって、様々な感情を音に乗せることができます。
例えば、優しい曲は吐息のような柔らかい息で、情熱的な曲は鋭く強い息で。音を震わせる「ビブラート」というテクニックを使えば、プロのような豊かな響きを生み出すことも可能です。シンプルな構造だからこそ、奏者の技術や感性がダイレクトに音に現れるのです。やればやるほど「もっとこんな風に吹きたい!」という欲が出てくる、飽きのこない楽器です。
オカリナを始める前に知っておきたい基礎知識
オカリナを手に取る前に、その歴史や種類について少しだけ知っておくと、楽器選びや練習がもっと楽しくなります。ここでは、知っておくとちょっと自慢できるかもしれない、オカリナの基礎知識をご紹介します。
オカリナの歴史
オカリナの原型となる「土笛」の歴史は非常に古く、紀元前のマヤ文明やアステカ文明の遺跡からも、動物の形をした土笛が発見されています。この頃はまだ楽器というより、鳥の鳴き声を真似るための道具や、儀式で使われる祭器としての役割が強かったようです。
現代のような形のオカリナが誕生したのは、19世紀のイタリアでのこと。北イタリアのブードリオという町に住んでいた、ジュゼッペ・ドナーティという菓子職人が、ガチョウの子供(ocarina)に似た形の土笛を改良し、正確な音階を演奏できるようにしたのが始まりとされています。「オカリナ」という名前も、この「ガチョウの子」を意味するイタリア語が由来なんですよ。なんだか可愛らしいですよね。
日本では、大正時代に伝わったとされています。その後、素朴な音色が日本人の感性にマッチし、学校教育で使われたり、愛好家が増えたりして、現在のように広く親しまれるようになりました。
オカリナの種類を知ろう
一口にオカリナと言っても、実は様々な種類があります。材質、音の高さ、出せる音の範囲(音域)によって分類されます。それぞれの特徴を知ることで、自分にぴったりのオカリナを見つけやすくなりますよ。
材質による違い(陶器製、プラスチック製)
オカリナの主な材質は「陶器」と「プラスチック」です。
- 陶器製
伝統的なオカリナで、本格的で深みのある豊かな音色が特徴です。土の種類や釉薬(うわぐすり)、焼き方によって音色が変わるため、一本一本に個性があります。丁寧に作られた陶器製のオカリナは、まさに工芸品のような美しさも兼ね備えています。ただし、陶器なので落とすと割れてしまうというデメリットも。取り扱いには注意が必要です。 - プラスチック製
比較的新しいタイプのオカリナで、安価で丈夫なのが最大のメリットです。落としても割れにくく、水洗いできるものもあるので、小さなお子様が初めて手にするオカリナとしても人気があります。音色は陶器製に比べると軽やかであっさりした傾向にありますが、最近では技術の進歩により、かなり本格的な音の出るプラスチック製オカリナも登場しています。
どちらが良いというわけではなく、それぞれに良さがあります。温かみのある本格的な音色を求めるなら陶器製、手軽さや丈夫さを重視するならプラスチック製、というように、ご自身の目的や使い方に合わせて選ぶのが良いでしょう。
音域による違い(ソプラノ管、アルト管、バス管など)
オカリナは、リコーダーと同じように、音の高さによっていくつかの種類に分かれています。これらを「管(かん)」と呼びます。主に「C管」「G管」「F管」などがあり、それぞれに高い方からソプラノ、アルト、バスといった区分があります。
| 種類 | 特徴 |
| ソプラノ管 (Soprano) | 鳥のさえずりのような、高く澄んだ美しい音色が特徴です。C管、G管、F管などがあります。本体が小さいため、手の小さい方やお子様でも持ちやすいですが、息のコントロールが少し難しい面もあります。アンサンブルでは主旋律を担当することが多い花形的存在です。 |
| アルト管 (Alto) | オカリナの中で最も標準的とされる種類です。特に「アルトC管」は、人間の声の高さに近く、温かみがあって落ち着いた音色が魅力です。楽譜もアルトC管用のものが最も多く出版されており、最初に持つ一本として選ばれることが非常に多いです。 |
| バス管 (Bass) | 大きく、低く、深く、豊かな音色が特徴です。C管やG管があります。アンサンブルでは、全体のサウンドを支える縁の下の力持ち的な存在。楽器が大きいため、しっかりとした息の量が必要になります。 |
| その他 | 上記以外にも、ソプラノとアルトの中間にあたる「ソプラニーノ管」や、バスよりさらに低い「コントラバス管」など、様々な音域のオカリナが存在します。 |
たくさんの種類があって混乱してしまうかもしれませんが、迷ったらまず「アルトC管」と覚えておけば間違いありません。多くの教則本や楽譜がアルトC管を基準に作られているため、練習をスムーズに進めることができます。
穴の数による違い(シングル管、ダブル管、トリプル管)
オカリナは、出せる音域を広げるために、管(歌口と内部の空間)を複数持ったものがあります。
- シングル管
最も一般的なタイプで、歌口が1つ、指穴が10~12個程度のものが主流です。出せる音域は、だいたい1.5オクターブ(ドレミファソラシドの1.5周分)です。ほとんどの童謡や簡単なポップスなどは、このシングル管で十分に演奏できます。初心者はまずこのシングル管からスタートします。 - ダブル管
歌口が2つあるオカリナです。1つ目の管で低い音域、2つ目の管で高い音域を演奏し、2本を合わせることで2オクターブ以上の広い音域をカバーできます。これにより、クラシック曲など、シングル管では音域が足りなくて演奏できなかった曲にも挑戦できるようになります。構造が複雑になる分、価格は高くなり、演奏にも慣れが必要です。 - トリプル管
歌口が3つあるオカリナで、さらに広い音域(3オクターブ以上)を出すことができます。プロのオカリナ奏者が、表現の幅を広げるために使用することが多いです。非常に高度な技術が求められるため、初心者がいきなり手を出すのは少しハードルが高いかもしれません。
まずはシングル管で基本をマスターし、もっと色々な曲が吹きたくなったらダブル管、トリプル管へとステップアップしていくのが一般的な道のりです。
オカリナの選び方【完全ガイド】
さて、オカリナの基礎知識を学んだところで、いよいよ自分の一本を選ぶ段階です。ここでは特定の商品名を挙げることはしませんが、どんな点に注意して選べば良いのか、失敗しないためのポイントを詳しく解説します。
失敗しないオカリナ選びのポイント
楽器選びは、今後のオカリナライフを左右する重要なイベントです。焦らず、じっくりと自分に合ったものを見つけましょう。
最初の1本は「アルトC管」がおすすめな理由
前の章でも少し触れましたが、最初の1本には「アルトC管」を強くおすすめします。その理由は主に3つあります。
- 音域が親しみやすい
アルトC管の音域は、人間の声の高さに近く、耳馴染みが良いのが特徴です。高すぎず低すぎず、聴いていても吹いていても心地よく感じられます。 - 楽譜が圧倒的に多い
市販されているオカリナの楽譜や教則本の多くは、アルトC管で演奏することを前提に作られています。そのため、吹きたい曲が見つけやすく、練習の題材に困ることがありません。 - 大きさが手頃
大人の手であれば、無理なく持つことができる標準的なサイズです。指穴の間隔も広すぎず狭すぎず、運指の練習がしやすいのもメリットです。
もちろん、高い音が好きだからソプラノ管、低い音に惹かれるからバス管、という選び方も間違いではありません。しかし、学習のしやすさを考えると、まずはアルトC管から入るのが最もスムーズな道と言えるでしょう。
自分の手の大きさに合うか
オカリナは、両手で包み込むようにして持ちます。そのため、自分の手の大きさにフィットするかどうかは非常に重要です。楽器が大きすぎると指が届かず、穴をしっかり塞ぐことができません。逆に小さすぎても、指が窮屈になってしまい、スムーズな指運びの妨げになります。
一番良いのは、実際に楽器店へ行って、気になるオカリナを手に持ってみることです。しっくりと手に馴染む感覚があるか、すべての指穴に無理なく指が届くかを確認しましょう。もしネット通販などで購入する際は、楽器の寸法や重さをよく確認し、自分の手のサイズと比較検討することが大切です。口コミなどで「女性の手には少し大きいかも」といった情報を参考にするのも良いでしょう。
音程(ピッチ)の正確さ
これは初心者にとって見極めるのが少し難しいかもしれませんが、とても大切なポイントです。「ド」の指使いで吹いた時に、きちんと「ド」の高さの音が出るか、ということです。この音程が不正確な楽器だと、どんなに正しく吹いても、なんだか気持ちの悪い演奏になってしまいます。
陶器製のオカリナは、手作りの要素が強いため、同じモデルでも一つ一つに微妙な個体差があります。信頼できるメーカーや工房で作られたものは、厳しい検品基準をクリアしているため、音程のばらつきが少ない傾向にあります。
もし可能であれば、スマートフォンのチューナーアプリなどを使って、お店で試奏させてもらうのが理想です。低い音から高い音まで一通り吹いてみて、音程が大きく狂っていないかチェックできると、より安心して購入できます。
息の強さとの相性
オカリナには、比較的弱い息でも楽に音が出るタイプと、ある程度しっかりした息を吹き込まないと良い音が出ないタイプがあります。これは、楽器の設計思想や作り手によって様々です。
肺活量にあまり自信がない方や、楽に吹きたい方は、弱い息で鳴らしやすいモデルが良いかもしれません。逆に、普段から管楽器を演奏している方や、しっかりとした吹き心地が好きな方は、息の抵抗が強めのモデルの方が物足りなさを感じずに済むでしょう。
これも実際に吹いてみないとわからない部分ですが、商品説明に「初心者でも鳴らしやすい」「しっかりとした吹き心地」といった記述がある場合は、それを参考にしてみましょう。
予算はどのくらい?
オカリナの価格は、本当にピンからキリまであります。数千円のプラスチック製のものから、数万円、中には十万円以上するプロ仕様の陶器製のものまで様々です。
価格の違いは、主に材質、製造方法(手作りか量産か)、ブランド、音程の精度、装飾の有無などによって決まります。一般的に、プラスチック製より陶器製の方が高価で、量産品より作家による手作りの品の方が高価になる傾向があります。
初心者が始める一本として、無理に高価なものを買う必要は全くありません。まずは1万円前後の予算を一つの目安として、信頼できるメーカーのアルトC管を探してみるのがおすすめです。その価格帯であれば、音程もしっかりしていて、長く愛用できる質の良いオカリナを見つけやすいでしょう。
さあ、オカリナを吹いてみよう!【基本の構え方・吹き方】
念願のマイ・オカリナを手に入れたら、いよいよ音を出してみましょう!ここでは、正しい持ち方から音の出し方、ドレミの運指まで、基本中の基本を丁寧に解説します。焦らず、一つずつ確認しながら進めていきましょう。
正しい持ち方(構え方)
美しい音色を出すための第一歩は、正しい構え方から。楽器が安定しないと、指もスムーズに動きません。
オカリナは、主に両手の親指と、右手の小指(楽器によっては薬指)で支えます。表面にある指穴は、左手の人差し指・中指・薬指・小指と、右手の人差し指・中指・薬指で塞ぎます。裏側には親指で塞ぐ穴が2つあります。
ポイントは、楽器をガチガチに握りしめないこと。鳥のヒナを優しく包むようなイメージで、ふんわりと持ちます。ストラップが付いているオカリナの場合は、必ず首にかけておきましょう。万が一手が滑っても、落下して割れるのを防いでくれます。
そして、指穴を塞ぐときは、指の腹(指紋の中心あたり)で、穴に隙間ができないようにしっかりと塞ぎます。少しでも隙間が空いていると、息が漏れてしまい、「ピー」「シー」という雑音が出たり、音程が狂ったりする原因になります。鏡を見ながら、すべての穴がきちんと塞がっているか確認するのも良い練習になりますよ。
音を出す基本「タンギング」
穴を全部塞いだら、いよいよ息を吹き込みます。この時、ただ「ふー」と息を入れるのではなく、「トゥー」と発音するようなイメージで息を吹き込むのがポイントです。これを「タンギング」と言います。
舌で上あごを軽く弾くようにして「トゥ」と発音すると、息の出だしがはっきりとし、一音一音の輪郭がクリアになります。タンギングをしないと、「ふぉー」という感じで音がぼやけてしまい、締まりのない演奏になってしまいます。
まずは、一番低い「ド」の音(すべての穴を塞いだ状態)で、「トゥー、トゥー、トゥー」と、一音ずつ区切って吹く練習をしてみましょう。次に、一つの音をできるだけ長く、まっすぐ伸ばす「ロングトーン」の練習もしてみましょう。「トゥーーーーー」と、音の高さや大きさが揺れないように、安定した息を送り続ける練習です。これは地味ですが、とても重要な基礎練習です。
ドレミの運指を覚えよう
タンギングで綺麗な音が出せるようになったら、いよいよドレミファソラシドを吹いてみましょう!ここでは、最も一般的なアルトC管の運指(指使い)を表でご紹介します。オカリナの種類やメーカーによって多少異なる場合がありますので、楽器に付属の運指表も必ず確認してくださいね。
基本は、リコーダーと同じように、低い音から高い音になるにつれて、指穴を順番に開けていきます。
アルトC管 運指表(一例)
| 音名 | 指使いのイメージ(●:塞ぐ ○:開ける) |
| 低い ラ (A4) | 表の穴を全部塞ぎ、裏の穴も全部塞ぐ。右手の小指の穴だけ開ける。 |
| 低い シ (B4) | 表の穴を全部塞ぎ、裏の穴も全部塞ぐ。 |
| ド (C5) | 低いシの状態から、右手の小指で塞ぐ穴を開ける。※これが基本のド |
| レ (D5) | ドの状態から、右手の薬指の穴を開ける。 |
| ミ (E5) | レの状態から、右手の中指の穴を開ける。 |
| ファ (F5) | ミの状態から、右手の人差し指の穴を開ける。 |
| ソ (G5) | ファの状態から、左手の薬指の穴を開ける。 |
| ラ (A5) | ソの状態から、左手の中指の穴を開ける。 |
| シ (B5) | ラの状態から、左手の人差し指の穴を開ける。 |
| 高い ド (C6) | シの状態から、右手の親指で塞いでいた裏の穴を開ける。 |
| 高い レ (D6) | 高いドの状態から、左手の親指で塞いでいた裏の穴を開け、代わりに右手の薬指の穴を塞ぐ。※ここから複雑になります |
| 高い ミ (E6) | すべての穴を開ける。※メーカーによって異なる場合が多い |
| 高い ファ (F6) | 左手の親指と人差し指、右手の中指と薬指で穴を塞ぐ。※メーカーによって異なる場合が多い |
最初は運指表を見ながらで構いません。一つ一つの音を、ゆっくり、確実に鳴らすことを心がけましょう。「ド→レ→ミ→ファ→ソ→ファ→ミ→レ→ド」というように、行ったり来たりする練習を繰り返すと、指が自然に動きを覚えていきますよ。
高い音をきれいに出すコツ
オカリナを始めたばかりの人がつまずきやすいのが、高い音です。低い音と同じ感覚で吹くと、音がかすれたり、出なかったりすることがあります。
高い音をきれいに鳴らすコツは、息のスピードを上げることです。ホースで水を撒くとき、遠くに飛ばすためにノズルを細く絞るイメージです。お腹に少し力を入れて、細く鋭い息を「スッ」と送り込みます。また、少しだけ楽器を上向き(あごを上げる感じ)にして吹くと、息の通り道がスムーズになり、高音が出やすくなることがあります。
低い音を優しく出すコツ
逆に、一番低い「ラ」や「シ」の音を出すのも、意外とコツが必要です。強い息を吹き込みすぎると、音程が上ずってしまったり、音がひっくり返ったりします。
低い音を出すコツは、「ほー」っと温かい息を、ゆっくり、たっぷりと楽器に入れるイメージです。決して弱い息ではなく、量は必要ですが、スピードはゆっくり。お腹の底から、太くて安定した息を送り出す感覚です。ろうそくの火を、消さないようにそっと揺らすような息遣いを意識してみてください。
オカリナ上達のための練習方法
基本的な音の出し方がわかったら、次はもっと上手に、もっと表情豊かに演奏するための練習です。地道な練習も多いですが、ここを頑張れば演奏のクオリティがぐっと上がります!
毎日5分でも楽器に触れる習慣を
上達への一番の近道は、なんといっても「継続」です。週末にまとめて3時間練習するよりも、毎日5分でも10分でも良いので、オカリナに触れる時間を作ることが大切です。唇の感覚や指の動きを、体が忘れないようにするためです。
テレビを見ながら指使いの練習をするだけでも構いません。寝る前にロングトーンを数回やるだけでも違います。生活の中にオカリナを吹く時間を組み込んで、習慣にしてしまいましょう。
基礎練習の重要性
どんな楽器でも、基礎練習は欠かせません。退屈に感じるかもしれませんが、しっかりとした土台があれば、難しい曲にも挑戦できるようになります。
ロングトーン
基本の吹き方でも触れましたが、一つの音をまっすぐ長く伸ばす練習です。これは音の安定性、音色の向上、息のコントロールなど、オカリナ演奏に必要なあらゆる要素を鍛えることができる、最も重要で効果的な練習です。
チューナーを使って、音程がふらふらしていないかを確認しながら行いましょう。最初は8拍、できるようになったら12拍、16拍と、少しずつ長く伸ばせるように挑戦してみてください。すべての音で、均一で美しい音色が出せるようになるのが目標です。
スケール(音階)練習
ドレミファソラシド、ドシラソファミレド、と音階を上がったり下がったりする練習です。これをやることで、指使いが滑らかになり、音と運指が頭の中で直結するようになります。
最初はゆっくり、一音一音はっきりと。慣れてきたら、メトロノームに合わせて少しずつテンポを上げていきましょう。タンギングをしっかり入れて、「トゥトゥトゥ…」と歯切れよく演奏する練習や、逆にタンギングをせずに滑らかにつなげる(スラー)練習も効果的です。
タンギングの練習
タンギングにも様々な種類があります。一音一音をはっきりと区切る基本的なタンギングの他に、より柔らかく区切る「ドゥードゥー」というようなタンギング(ソフトタンギング)や、速いパッセージで使う「トゥクトゥク」というタンギング(ダブルタンギング)などがあります。色々なリズムでタンギングの練習をすることで、曲に表情をつけられるようになります。
曲を練習するときのポイント
基礎練習と並行して、好きな曲の練習も進めていきましょう。やっぱり曲が吹けると楽しいですよね!
- 簡単な曲、知っている曲から始める
いきなり難易度の高い曲に挑戦すると、挫折の原因になります。まずは「きらきら星」や「チューリップ」など、誰でも知っている簡単な童謡から始めてみましょう。メロディーを知っている曲の方が、音の間違いに気づきやすく、上達も早いです。 - 部分的に練習する
曲を最初から最後まで通して吹く練習ばかりしていると、いつも同じ場所で間違えてしまいがちです。うまくできないフレーズや、指使いが難しい箇所を見つけたら、その部分だけを抜き出して、ゆっくり、繰り返し練習しましょう。できるようったらい、その前後のフレーズと繋げてみる、というように、少しずつ範囲を広げていくのが効果的です。 - メトロノームを使う
自分の演奏は、知らず知らずのうちにテンポが速くなったり遅くなったりするものです。メトロノームを使って、正しいリズムとテンポで演奏する癖をつけましょう。最初はゆっくりなテンポから始めて、完璧にできたら少しずつ速くしていきます。 - 自分の演奏を録音して聴いてみる
これは少し勇気がいるかもしれませんが、上達のためには非常に効果的な方法です。スマートフォンなどの録音機能で自分の演奏を録音し、客観的に聴いてみましょう。吹いている時には気づかなかった音程のズレやリズムの乱れ、音色のムラなど、改善すべき点がはっきりとわかります。
表現力を豊かにするテクニック
ある程度スムーズに曲が吹けるようになったら、さらに表現力を高めるテクニックにも挑戦してみましょう。
ビブラート
音を心地よく揺らすテクニックです。ロングトーンにこのビブラートをかけるだけで、演奏がぐっとプロっぽく、感情豊かに聴こえます。主に、お腹(横隔膜)をリズミカルに動かして息の圧力を変化させる方法と、喉を震わせてかける方法があります。最初は難しいですが、憧れのテクニックの一つです。
ポルタメント
ある音から次の音へ、しゃくり上げるように滑らかにつなぐ奏法です。例えば「ド」から「ミ」に移動する時に、「ドーゥミ」というように、間の音を経過してつなげます。使いすぎるとくどくなりますが、効果的に使うと、とても情感豊かな表現ができます。
強弱(ダイナミクス)をつける
メロディーの盛り上がりに合わせて音を大きく(フォルテ)したり、静かな部分ではささやくように小さく(ピアノ)したり。息の量やスピードをコントロールして、曲に立体感と物語性を与えるのが強弱です。楽譜に書かれた強弱記号を守るだけでなく、自分がどう表現したいかを考えて強弱をつけることが大切です。
オカリナのメンテナンスとお手入れ方法
大切なオカリナと長く付き合っていくためには、日頃のお手入れが欠かせません。特に陶器製のオカリナはデリケートなので、正しい知識を身につけておきましょう。
普段のお手入れ
演奏すると、楽器の中には呼気に含まれる水分(結露)が溜まります。これを放置すると、カビや臭いの原因になることがあります。
演奏が終わったら、管内の水分を優しく拭き取りましょう。市販されているオカリナ専用のクリーニングロッド(掃除棒)にガーゼを巻き付けたものや、細長い布(吸水性の良いマイクロファイバーなど)を歌口からそっと入れて、内部の水分を吸い取ります。この時、楽器内部を傷つけないように、無理にゴシゴシこすらないように注意してください。
楽器の表面についた指紋や汚れは、メガネ拭きのような柔らかい布で優しく拭き取ります。プラスチック製のオカリナは、モデルによっては水洗いできるものもありますが、陶器製のオカリナは絶対に水でじゃぶじゃぶ洗ってはいけません。
保管方法
お手入れが終わったら、適切に保管します。オカリナは急激な温度変化や、極端な高温多湿、乾燥が苦手です。
- 直射日光が当たる場所や、夏場の車内、ストーブの近くなどには絶対に放置しないでください。
- 湿気が多すぎるとカビの原因に、乾燥しすぎると(特に素焼きのものは)ひび割れの原因になることがあります。
- 保管する際は、購入時に付属してきた専用のソフトケースやハードケースに入れるのが基本です。ケースが衝撃から楽器を守ってくれます。
- 長期間演奏しない場合でも、時々はケースから出して、風通しの良い日陰で外気に触れさせてあげると良いでしょう。
陶器製オカリナの注意点
陶器製オカリナで、何よりも気をつけなければいけないのが「落下」です。陶器なので、硬い床などに落とすと、当たり所によっては簡単に割れたり、欠けたりしてしまいます。修理は非常に困難か、不可能な場合が多いです。
演奏する時以外は必ずケースにしまう、高い場所や不安定な場所に置かない、といった基本的な注意を徹底しましょう。ストラップが付属しているモデルは、練習中も必ず首からかけておくことを強くおすすめします。
また、冬場など、冷え切った状態のオカリナを急に暖かい息で温めると、温度差でひびが入ってしまう可能性もゼロではありません。寒い屋外から暖かい部屋に入った時などは、少し時間をおいて、楽器が室温に馴染んでから吹くようにすると、より安全です。
もしもの時の対処法
万が一、オカリナを落としてしまったり、ひびが入ってしまったりした場合は、自分で修理しようとせず、まずは購入した楽器店や、製造したメーカー、工房に相談しましょう。状態によっては修理可能な場合もあります。接着剤などで素人が修理を試みると、かえって状態を悪化させてしまうことが多いので、専門家に任せるのが一番です。
もっとオカリナを楽しむために
一人で黙々と練習するのも楽しいですが、他の人と関わったり、新しい目標を見つけたりすると、オカリナライフはさらに豊かになります。
楽譜の探し方
レパートリーを増やすには、楽譜が欠かせません。大きな楽器店に行けば、オカリナ専用の楽譜コーナーが設けられていることが多いです。オンラインの楽譜販売サイトでも、たくさんの楽譜を見つけることができます。
「オカリナ名曲集」といったタイトルの楽譜集には、様々なジャンルの定番曲が収められているので、最初の1冊として便利です。J-POPやアニメソング、映画音楽、スタジオジブリ作品集、クラシック、童謡・唱歌など、本当に色々なジャンルの楽譜が出版されています。中には、指番号や「ドレミ」のフリガナが振ってある親切な楽譜もあるので、楽譜を読むのが苦手な方でも安心です。
仲間を見つけよう
一人で練習していると、どうしてもモチベーションが続かなくなったり、自分の演奏が良いのか悪いのか分からなくなったりすることがあります。そんな時は、オカリナ仲間を見つけるのがおすすめです。
地域の公民館などで活動しているオカリナサークルを探してみたり、楽器店が主催するオカリナ教室に通ってみたりするのも良いでしょう。同じ趣味を持つ仲間と情報交換をしたり、一緒に演奏(アンサンブル)したりするのは、とても楽しい経験です。上級者からアドバイスをもらえるというメリットもあります。
最近では、SNSやブログ、YouTubeなどのオンライン上で、オカリナのコミュニティを探すこともできます。住んでいる場所に関係なく、気軽に仲間と繋がれるのも現代ならではの魅力ですね。
発表会やイベントに参加してみる
「人前で演奏するなんてとんでもない!」と思うかもしれませんが、発表会や小さなコンサートに参加してみることは、上達のための大きなカンフル剤になります。「次の発表会であの曲を吹く!」という目標ができると、日々の練習にも身が入ります。
最初は緊張するかもしれませんが、演奏を終えた後の達成感は格別です。また、他の人の演奏を聴くことも、曲のレパートリーを広げたり、演奏のヒントを得たりする絶好の機会になります。
アンサンブルの魅力
ソプラノ管、アルト管、バス管など、異なる音域のオカリナが集まって演奏することを「アンサンブル」と言います。主旋律を吹く楽器、ハーモニーを奏でる楽器、リズムを刻む楽器など、それぞれが違う役割を担い、一つの音楽を作り上げていきます。
自分の音と他の人の音が重なり合って、美しいハーモニーが生まれた時の感動は、一人で演奏している時には味わえない、アンサンブルならではの醍醐味です。もし機会があれば、ぜひ挑戦してみてください。音楽の世界がぐっと広がりますよ。
オカリナに関するQ&A
最後に、オカリナを始めるにあたって、多くの方が抱く疑問にお答えします。
Q. 楽譜が読めなくても大丈夫?
A. 大丈夫です! もちろん読めるに越したことはありませんが、楽譜が読めなくてもオカリナを楽しむ方法はたくさんあります。
前述の通り、運指(指の形)がイラストで描かれている楽譜や、音符にドレミのフリガナが振ってある楽譜がたくさん市販されています。また、耳で聴いたメロディーを、一つずつ音を探りながら吹いてみる「耳コピー」に挑戦するのも楽しいですよ。まずは音を出すこと、メロディーを奏でることを楽しむのが第一歩。続けていくうちに、自然と楽譜も読めるようになってくることが多いです。
Q. どのくらいの期間で1曲吹けるようになりますか?
A. これは個人差が非常に大きいですが、一つの目安としてお答えします。
練習量や元々の音楽経験にもよりますが、「きらきら星」のような非常に簡単な曲であれば、早い人ならその日のうちに吹けるようになることもあります。毎日コツコツと30分程度の練習を続ければ、1ヶ月もすれば簡単な曲なら数曲はレパートリーになっている、という方は少なくありません。焦らず、ご自身のペースで進めることが大切です。
Q. 指が短いのですが、吹けますか?
A. 吹ける可能性は十分にあります。
オカリナには、ソプラノ管のような小さなサイズのものから、バス管のような大きなサイズのものまで、様々な大きさがあります。手の大きさに自信がない方は、まず標準的なアルトC管を試してみて、もし大きいと感じるようであれば、少し小さなソプラノG管やソプラノF管などを検討してみるのも良いでしょう。きっとご自身の手にフィットする一本が見つかるはずです。
Q. 息が続かないのですが…
A. 最初は誰でもそうです。心配いりません。
管楽器の演奏には、普段の呼吸とは少し違う「腹式呼吸」が効果的です。お腹を膨らませるように息を吸い、お腹から息を支えるようにして吐き出します。この腹式呼吸を意識しながら、基礎練習のロングトーンを続けることで、少しずつ息が長く、安定して続くようになります。また、無理に長いフレーズを一息で吹こうとせず、曲の途中で息継ぎ(ブレス)をする場所を決めておくことも重要です。歌を歌う時と同じですね。
Q. 独学でも上達できますか?
A. 可能です。
今は、丁寧な解説付きの教則本やDVD、YouTubeなどの動画レッスンなど、独学のための教材が非常に充実しています。これらの教材をうまく活用すれば、独学でも十分に上達することができます。
ただし、独学の場合、持ち方や息の入れ方などに変な癖がついてしまう可能性もあります。もし可能であれば、一度だけでも良いので、オカリナ教室の体験レッスンに参加したり、地域のサークルを覗いてみたりして、経験者に自分の演奏をチェックしてもらう機会があると、上達の近道になることは間違いありません。
まとめ
オカリナの魅力から、選び方、練習方法、そして楽しみ方のヒントまで、盛りだくさんでお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
オカリナは、どこか懐かしく優しい音色で、私たちの日常にそっと彩りを加えてくれる素敵な楽器です。手軽に始められ、それでいてどこまでも奥深い表現力を秘めています。
この記事でご紹介したのは、あくまで一般的な知識や練習方法です。一番大切なのは、あなた自身が「楽しい!」と感じる気持ちです。難しいテクニックに挑戦するのも、お気に入りの一曲をただただ気持ちよく吹くのも、どちらも素晴らしいオカリナの楽しみ方です。
この記事が、あなたのオカリナライフの第一歩を踏み出すきっかけになれたなら、これほど嬉しいことはありません。さあ、あなただけの一本を見つけて、素朴で温かい音の世界へ旅立ってみませんか?

