オーディオインターフェイスって何?なぜ必要なの?
パソコンで音楽を作ったり、高音質でゲーム実況を配信したり、楽器の演奏を録音したり…そんな「音」にこだわりたいと思ったとき、必ず耳にするのが「オーディオインターフェイス」という機材です。でも、一体これは何なのでしょうか?「なんだか難しそう…」と感じる方も多いかもしれませんね。ご安心ください!この記事では、特定の商品をおすすめすることは一切せず、オーディオインターフェイスの基本的な知識から、自分に合った機材を選ぶためのポイントまで、どこよりも分かりやすく解説していきます。
一言でいうと、オーディオインターフェイスは「パソコンの音の入出力を専門的に担当する高機能な外付けサウンドカード」のようなものです。パソコンにもともと付いているイヤホンジャックやマイク入力端子も音を扱いますが、オーディオインターフェイスはそれらとは比べ物にならないほど高性能で、多機能なんです。
では、なぜパソコン標準の機能ではダメなのでしょうか?理由は大きく3つあります。
- 音質の問題:パソコンに内蔵されているサウンド機能は、あくまで「おまけ」のようなもの。音楽鑑賞や制作には不要なノイズが多く乗ってしまったり、音がこもって聞こえたりすることがあります。オーディオインターフェイスを使えば、クリアで解像度の高いサウンドを実現できます。
- 接続できる機器の制限:本格的なコンデンサーマイクや、エレキギター、シンセサイザーなどをパソコンに直接つなぐことは、基本的にはできません。オーディオインターフェイスには、そういった様々な楽器や機材に対応した専門の入力端子が備わっています。
- 音の遅延(レイテンシー):パソコンで楽器を録音しようとすると、「弾いた瞬間」と「スピーカーから音が出る瞬間」にわずかなズレが生じます。これを「レイテンシー」と呼びますが、この遅延が大きいとまともに演奏することができません。オーディオインターフェイスは、この遅延を人間が感じられないレベルまで小さくする役割も担っています。
この記事では、特定の商品名やランキングは一切登場しません。その代わり、あなたがオーディオインターフェイスという機材を深く理解し、ご自身の「やりたいこと」にピッタリ合った一台を見つけ出すための「知識」を提供することをお約束します。じっくり読んで、あなただけの機材選びの羅針盤を手に入れてくださいね!
オーディオインターフェイスの役割を深掘り!
オーディオインターフェイスが「音を良くするためのもの」というのは分かったけど、具体的にどんな仕組みで、どんな仕事をしてくれるのでしょうか?ここでは、その心臓部ともいえる重要な役割を4つに分けて、もう少し詳しく見ていきましょう。これを理解すれば、機材選びがグッと楽になりますよ。
役割1:音の出入り口をまとめるハブ機能
オーディオインターフェイスの最も分かりやすい役割が、これです。パソコンの周りには、音に関する様々な機器がありますよね。例えば、歌を録るための「マイク」、演奏を録るための「ギター」や「キーボード」、音を確認するための「スピーカー」や「ヘッドホン」。これら全部をパソコンに直接つなぐのは大変ですし、そもそも端子が対応していません。
オーディオインターフェイスは、これらの音の「入力」と「出力」を一手に引き受けるハブ(集約点)として機能します。マイクや楽器はオーディオインターフェイスの入力端子に、スピーカーやヘッドホンは出力端子に接続します。そして、オーディオインターフェイスとパソコンはUSBケーブルなどで接続するだけ。こうすることで、バラバラだった音の経路が整理され、スマートな制作環境が整うのです。どの端子に何を繋ぐか、というのも機材選びの重要なポイントになりますが、それは後ほど詳しく解説しますね。
役割2:高音質なサウンドを実現する「AD/DA変換」
これがオーディオインターフェイスの真骨頂であり、音質を左右する最も重要な機能です。「AD/DA変換(エーディー・ディーエーへんかん)」という言葉、初めて聞く方もいるかもしれません。大丈夫、難しくありませんよ。
- AD変換(Analog to Digital Conversion):マイクで拾った声やギターの音は、空気の振動、つまり「アナログ信号」です。パソコンは「0」と「1」の「デジタル信号」しか理解できません。そこで、アナログ信号をデジタル信号に変換してあげる必要があります。この役割を担うのがADコンバーターです。この変換の精度が高ければ高いほど、元の音に忠実で解像度の高いデジタルサウンドになります。
- DA変換(Digital to Analog Conversion):逆に、パソコン内部で処理されたデジタル信号を、私たちが耳で聞くことができるアナログ信号に変換する必要もあります。スピーカーやヘッドホンから音を出すためには、この変換が不可欠。この役割を担うのがDAコンバーターです。この精度が高ければ、パソコン上の音源をよりクリアで、表現力豊かに再生することができます。
パソコン内蔵のサウンド機能にもこのAD/DA変換機能はありますが、その精度は限定的です。オーディオインターフェイスは、このAD/DA変換に特化した高品質なパーツを使っているため、パソコン標準の機能とは比較にならないほど高音質なサウンドが手に入る、というわけです。
役割3:プロクオリティの録音を可能にする「マイクプリアンプ」
特にボーカルやアコースティック楽器の録音を考えている方にとって、非常に重要なのが「マイクプリアンプ」です。マイクが拾う音声信号は、実はとても微弱です。そのままでは小さすぎて、ノイズに埋もれてしまいます。そこで、この微弱な信号を、パソコンが扱える適切なレベルまでクリアに増幅してあげる必要があります。この増幅器が「マイクプリアンプ」です。
ただ単に音量を大きくするだけなら簡単なのですが、良いマイクプリアンプは「音のキャラクターを保ったまま、ノイズを加えずに綺麗に増幅」してくれます。マイクプリアンプの品質は、録音される音の質感や明瞭さに直接影響します。オーディオインターフェイスには、この高品質なマイクプリアンプが内蔵されているのです。製品の価格帯によって、このプリアンプの性能も変わってくることが多い、重要なチェックポイントの一つです。
役割4:遅延をなくす「ダイレクトモニタリング」
先ほども少し触れましたが、録音時の「音の遅延(レイテンシー)」は非常に厄介な問題です。ギターを弾いたのに、0.数秒遅れて音が聞こえてきたら、気持ちよく演奏なんてできませんよね。この遅延は、マイクやギターから入った音が、オーディオインターフェイスを通り、パソコンで処理され、再びオーディオインターフェイスから出てスピーカーやヘッドホンに届くまでのタイムラグによって発生します。
この問題を解決するのが「ダイレクトモニタリング」という機能です。これは、オーディオインターフェイスに入力された音を、パソコンを経由させずに直接ヘッドホンやスピーカーに出力する仕組みです。パソコンの処理をすっ飛ばすので、理論上、遅延はゼロになります。これにより、演奏者は自分の演奏をリアルタイムで聴きながら、快適に録音を進めることができるのです。最近のほとんどのオーディオインターフェイスには搭載されていますが、とても重要な機能なので覚えておきましょう。
失敗しない!オーディオインターフェイスの選び方
さて、オーディオインターフェイスの役割が分かったところで、いよいよ本題の「選び方」です。世の中には本当にたくさんの種類のオーディオインターフェイスがあり、迷ってしまいますよね。でも、大丈夫。これから紹介するステップに沿って考えていけば、あなたにとって必要な機能が見えてくるはずです。一番大切なのは、「あなたがオーディオインターフェイスを使って何をしたいのか」を具体的にイメージすることです。
ステップ1:接続する機器で選ぶ(入出力端子の種類と数)
まず最初に考えるべきは、「何を繋ぎたいか?」そして「同時にいくつ繋ぎたいか?」です。これによって、必要な入出力端子の種類と数が決まります。
入力端子の種類
音を入力するための端子にも、いくつか種類があります。代表的なものを知っておきましょう。
マイク入力(XLR端子):
これは、本格的なマイクを接続するための端子です。丸い形に3つのピンがあるのが特徴で、「キャノン端子」とも呼ばれます。マイクには大きく分けて、電源が必要な「コンデンサーマイク」と、電源が不要な「ダイナミックマイク」があります。コンデンサーマイクを使う場合は、オーディオインターフェイスから「ファンタム電源(+48V)」と呼ばれる電気を供給してあげる必要があります。コンデンサーマイクを使いたい方は、ファンタム電源供給機能が付いているかを必ずチェックしましょう。
楽器入力(TS/TRS端子、Hi-Z):
ギターやベース、キーボード(シンセサイザー)などを接続するための端子です。標準的なシールドケーブルの先についているプラグ(フォーンプラグ)を挿す穴ですね。ここで一つ重要なキーワードが「Hi-Z(ハイインピーダンス)」です。エレキギターやエレキベースは、内部の電気的な抵抗値が特殊で、そのまま接続すると音が細く、弱々しくなってしまいます。Hi-Z入力は、そうした楽器の信号を正しく受け止めるための専用入力です。「INST」や「GUITAR」と表記されていることもあります。ギターやベースを直接繋いで録音したい方は、このHi-Z入力が必須です。
ライン入力(TRS/RCA端子):
シンセサイザーや外部のミキサー、CDプレイヤーなど、すでにある程度大きな音声信号を出力する機器を接続するための端子です。楽器入力と同じフォーン端子(TRS)が使われることが多いですが、オーディオ機器でよく見かける赤と白の「RCA端子」を備えたモデルもあります。キーボードなどをステレオで接続したい場合は、ライン入力が2つ(L/R)必要になります。
出力端子の種類
音を出すための出力端子もチェックしましょう。
メイン出力(TRS/XLR端子):
モニタースピーカーに接続するためのメインの出力です。ノイズに強い「バランス接続」に対応したTRS端子やXLR端子が使われるのが一般的です。良い音でモニタリング(音のチェック)をするためには、このメイン出力からモニタースピーカーへ接続します。
ヘッドホン出力:
これは文字通り、ヘッドホンを接続するための端子です。夜間の作業や、より細かい音のチェックに欠かせません。ヘッドホン出力が2系統あると、演奏者とエンジニアが別々の音量でモニターできるなど、複数人での作業に便利です。端子のサイズも、一般的なステレオミニプラグと、太い標準プラグがあるので、自分の持っているヘッドホンに合わせて確認しましょう(変換プラグを使えばどちらにも対応できます)。
入出力の数を考えよう
端子の種類と合わせて、その「数」も非常に重要です。これは、「同時にいくつの音を録音・再生したいか」で決まります。
- 弾き語りを録音したい:ボーカル用のマイク(入力1)と、アコースティックギター用のマイクまたはギターのライン出力(入力2)が必要なので、最低2つの入力が必要です。
- 一人でボーカルとギターを別々に録音する(重ね録り):この場合、同時に録音するのは1つずつなので、入力は1つでも可能です。しかし、マイクとギターをいちいち抜き差しするのは面倒なので、2入力あると便利でしょう。
- シンセサイザーをたくさん使いたい:ステレオ出力のシンセを3台同時に使いたいなら、ライン入力が6つ必要になります。
– バンドのデモを録りたい:例えば、ドラム、ベース、ギター、ボーカルを同時に録音するなら、それぞれのマイクやラインの数だけ入力チャンネルが必要になります。ドラムだけでも複数のマイクを立てることが多いので、8入力や16入力といった多チャンネルのモデルが必要になります。
最初は「2入力/2出力(2in2out)」といったスペックの製品から始める方が多いです。これは「同時に2つの音を入力でき、2つの音(ステレオ)を出力できる」という意味です。自分のやりたいことだけでなく、将来的にやりたいことが増える可能性も少し考えて、余裕を持った数の入出力があるモデルを選ぶのも一つの手です。
ステップ2:音質で選ぶ(サンプリングレートとビット深度)
次に、音質に関わるスペックを見ていきましょう。ここで出てくるのが「サンプリングレート」と「ビット深度」という、ちょっと専門的な言葉です。でも、考え方は料理に似ています。高画質な写真が細かい点の集まりであるように、デジタルオーディオも音を細かく分割して記録しています。その「細かさ」を表すのがこの2つの数値です。
サンプリングレートとは?
サンプリングレートは、「1秒間に音の波を何回サンプリング(採取)するか」を示す数値で、単位は「Hz(ヘルツ)」です。数値が大きいほど、より多くの情報量を記録でき、元の滑らかなアナログ波形に近い音を再現できます。パラパラ漫画をイメージすると分かりやすいかもしれません。1秒間の枚数が多ければ多いほど、動きが滑らかに見えますよね。それと同じです。
| サンプリングレート | 主な用途 |
| 44.1kHz | 音楽CDの規格。一般的な音楽リスニングや制作の基準となる音質です。 |
| 48kHz | 映像作品(DVD、Blu-ray、動画配信など)で標準的に使われる音質です。 |
| 96kHz / 192kHz | 「ハイレゾ音源」と呼ばれる高解像度な音質。より繊細な空気感や倍音を記録できます。 |
ビット深度とは?
ビット深度は、「音の大小(ダイナミクス)をどれだけ細かい段階で表現できるか」を示す数値で、単位は「bit(ビット)」です。数値が大きいほど、より小さな音から大きな音までの変化を滑らかに記録できます。これは写真の「色の数」に例えられます。ビット深度が低いと、色のグラデーションがカクカクして見えますが、高いと滑らかなグラデーションになりますよね。音も同じで、ビット深度が高いほど、静かな部分のノイズが少なくなり、ダイナミックレンジ(最も小さい音と最も大きい音の差)の広い、表現力豊かなサウンドになります。
| ビット深度 | 主な用途 |
| 16bit | 音楽CDの規格。十分なダイナミックレンジがありますが、録音・編集段階では少し余裕がほしいところです。 |
| 24bit | 現在の音楽制作の標準。非常に広いダイナミックレンジを持ち、小さな音もノイズに埋もれにくいため、編集時の自由度が高いです。 |
| 32bit float | 最近増えてきた規格。理論上、録音時に音割れ(クリッピング)しないという大きなメリットがあります。編集で後から音量を調整できるため、録音時のシビアなレベル調整から解放されます。 |
結局どれを選べばいいの?
「じゃあ、数値が一番大きいものを選べばいいの?」と思うかもしれませんが、一概にそうとは言えません。サンプリングレートやビット深度が高いほど、データ量は当然大きくなります。すると、パソコンのCPUやストレージに大きな負荷がかかり、動作が不安定になる可能性もあります。現在の音楽制作では、「24bit / 48kHz」または「24bit / 96kHz」で作業するのが一般的です。ほとんどのオーディオインターフェイスがこのスペックに対応しているので、まずはこのあたりを目安に考えると良いでしょう。32bit float対応モデルは、録音時の失敗を減らしたい方にとって魅力的な選択肢になります。
ステップ3:接続方式で選ぶ(USB, Thunderboltなど)
オーディオインターフェイスとパソコンを繋ぐケーブルの規格も、いくつか種類があります。ご自身のパソコンにどの端子があるか、必ず確認しましょう。
USB接続
現在、最も一般的で主流な接続方式です。ほとんどのパソコンにUSBポートは付いているので、汎用性が高いのが魅力です。USBにもいくつかの規格があります。
- USB 2.0:長らく標準だった規格。24bit/192kHzといったハイレゾ音源や、ある程度の入出力数でも十分な転送速度を持っています。
- USB 3.0 (3.1/3.2):USB 2.0よりも高速な規格。より多くの入出力チャンネルを扱うモデルや、低遅延を追求したモデルで採用されています。
- USB Type-C:最近のPCやMacで主流の、上下の区別がない端子の形状です。ケーブルの中身がUSB 2.0の場合もあれば、USB 3.1やThunderboltの場合もあるので、形状だけで判断せず、規格をしっかり確認することが大切です。
また、電源の供給方法にも「USBバスパワー」と「セルフパワー」の2種類があります。バスパワーは、パソコンからUSBケーブル経由で電源も供給する方式で、ACアダプターが不要なため手軽で持ち運びにも便利です。一方、セルフパワーは、付属のACアダプターを使ってコンセントから電源を取る方式です。より安定した電源供給が可能で、多くの入出力を持つモデルや高機能なモデルで採用されています。
Thunderbolt接続
Apple社のMacに多く採用されている高速なデータ転送規格です。USBよりもさらに高速で、大量のデータを非常に低い遅延でやり取りできるのが最大のメリット。多数のチャンネルを同時に録音したり、DSPエフェクトを多用したりするプロフェッショナルな環境で真価を発揮します。最近ではWindowsのPCでもThunderbolt端子を搭載したモデルが増えてきています。
その他の接続方式(FireWire, PCI/PCIe)
一昔前は主流だった「FireWire」や、パソコン内部のスロットに直接カードを挿す「PCI/PCIe」といった接続方式もあります。現在ではあまり見かけませんが、中古品などを探す際には見かけるかもしれません。基本的には、これから新しく購入するならUSBかThunderbolt対応のモデルを考えるのが良いでしょう。
ステップ4:便利な付加機能で選ぶ
基本的なスペックに加えて、あると便利な「付加機能」もチェックしてみましょう。あなたのやりたいことに直結する機能が見つかるかもしれません。
ループバック機能
これは特に、ゲーム実況やポッドキャスト、ライブ配信を考えている方にとって、ほぼ必須ともいえる機能です。通常、オーディオインターフェイスはマイクなど外部から入力された音だけをパソコンに送ります。しかし、ループバック機能があると、「マイクの音」と「パソコン内部で再生されている音(BGMやゲーム音など)」をミックスして、再びパソコンに送ることができます。この機能がないと、自分の声とBGMを一緒に配信するために、複雑な設定や別のソフトが必要になってしまいます。配信が目的なら、ループバック機能の有無は必ず確認しましょう。
DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)
DSPとは、オーディオインターフェイス本体に内蔵されたエフェクト処理用のチップのことです。通常、リバーブ(響き)やコンプレッサー(音圧を整える)といったエフェクトは、パソコンのCPUパワーを使ってDAWソフト上で処理します。しかし、DSPが搭載されているモデルなら、パソコンに一切負荷をかけることなく、オーディオインターフェイス側で高品質なエフェクトをかけることができます。
これには2つの大きなメリットがあります。一つは、録音時に遅延なくエフェクトのかかった音をモニターできること。例えば、ボーカルを録るときに少しリバーブがかかっていると、気持ちよく歌えますよね。もう一つは、エフェクトをかけた状態で録音する「かけ録り」ができることです。パソコンの性能に自信がない方や、より快適な録音環境を求める方におすすめの機能です。
MIDI入出力端子
MIDIキーボードや音源モジュール、ドラムマシンといった「MIDI(ミディ)」という規格でやり取りする楽器を接続するための端子です。最近のMIDIキーボードはUSBで直接パソコンに接続できるものが多いですが、古いシンセサイザーや一部の機材はMIDI端子でないと接続できません。MIDI機器を使いたい、または将来的に使う可能性があるという方は、MIDI IN/OUT端子が付いているモデルを選ぶと安心です。
操作性やデザイン
スペック表には現れない部分ですが、日々の使いやすさも非常に重要です。机の上に置く「デスクトップ型」なのか、機材ラックに収める「ラックマウント型」なのか。メインの音量調整ノブは大きく、操作しやすい位置にあるか。各種ボタンやメーターは見やすいか。こうした物理的な操作性も、長く使っていく上での満足度を左右します。可能であれば、実際に楽器店などで実機に触れてみるのも良いでしょう。
購入後にやること!接続と設定の基本
お気に入りの一台を手に入れたら、いよいよセッティングです。ここでは、基本的な接続と設定の流れを解説します。製品によって細かい手順は異なりますので、必ず付属の取扱説明書と合わせて確認してくださいね。
まずはドライバーのインストールから
オーディオインターフェイスをパソコンに正しく認識させ、その性能を最大限に引き出すための専用ソフトウェアを「ドライバー」と呼びます。多くの製品では、このドライバーのインストールが必須です。CD-ROMが付属していることもありますが、基本的にはメーカーの公式サイトから最新版のドライバーをダウンロードしてインストールするのがおすすめです。古いドライバーだと、OSとの互換性の問題で正常に動作しないことがあるからです。接続する前に、まずドライバーのインストールを済ませておきましょう。
PCとオーディオインターフェイスを接続する
ドライバーのインストールが終わったら、いよいよ本体を接続します。USBケーブルやThunderboltケーブルで、オーディオインターフェイスとパソコンを繋ぎます。セルフパワーのモデルの場合は、ACアダプターもコンセントに接続します。その後、本体の電源をONにしましょう。パソコンが新しいデバイスとしてオーディオインターフェイスを認識するはずです。
OSのサウンド設定を変更する
次に、パソコンの「音の司令塔」を、内蔵サウンド機能から新しいオーディオインターフェイスに切り替える設定を行います。
- Windowsの場合:画面右下のスピーカーアイコンを右クリックし、「サウンド設定」を開きます。出力デバイスと入力デバイスの一覧から、購入したオーディオインターフェイスの名前を選択します。
– macOSの場合:「システム環境設定(またはシステム設定)」から「サウンド」を開きます。「出力」タブと「入力」タブの両方で、使用する装置としてオーディオインターフェイスを選択します。
この設定を行うことで、YouTubeの再生音やOSの通知音など、パソコンから出るすべての音がオーディオインターフェイスから出力されるようになります。
DAW(音楽制作ソフト)での設定
音楽制作や録音を行う場合は、使用するDAWソフト上でも設定が必要です。DAWソフト(Cubase, Logic, Ableton Live, Studio Oneなど)を起動し、環境設定やオーディオ設定の項目を開きます。そこで、オーディオデバイス(またはASIOドライバー on Windows)として、使用するオーディオインターフェイスを選択します。
この画面では、「バッファサイズ」という設定も行えます。これはレイテンシー(遅延)の大きさに直接関わる重要な設定です。バッファサイズを小さくすると遅延は減りますが、パソコンへの負荷は大きくなります。逆に大きくすると、遅延は増えますが動作は安定します。録音時にはできるだけ小さく、ミックスや編集作業時には少し大きめに設定するのが一般的です。自分のパソコンの性能と相談しながら、音が途切れたりノイズが出たりしない範囲で調整してみましょう。
困ったときはここをチェック!Q&A
「設定したはずなのに音が出ない!」「なんだかノイズが気になる…」そんなトラブルはつきものです。慌てずに、まずは基本的なところからチェックしてみましょう。よくある質問と対処法をまとめました。
Q. 音が出ない・録音できない
最も多いトラブルですが、原因は意外と単純なことが多いです。一つずつ確認してみましょう。
- ドライバーは正しくインストールされていますか?:まずは基本のキ。メーカーサイトから最新版を入れ直してみましょう。
- OSやDAWのサウンド設定は正しいですか?:音の入出力先が、ちゃんとオーディオインターフェイスになっていますか?もう一度確認してみましょう。
- ケーブルはしっかり接続されていますか?:USBケーブル、スピーカーケーブル、マイクケーブルなど、一度抜いて挿し直してみるのも有効です。
- 本体のツマミは上がっていますか?:メインの出力ボリュームやヘッドホンのボリューム、マイクのゲイン(入力レベル)のツマミがゼロになっていませんか?
- ファンタム電源はONになっていますか?:コンデンサーマイクを使っている場合、ファンタム電源(+48V)を入れ忘れているケースが非常に多いです。
- ダイレクトモニターとDAWのモニターが混ざっていませんか?:音が二重に聞こえたり、位相がおかしくなったりする場合、DAWソフト側の入力モニターをオフにしてみましょう。
Q. ノイズが乗る
「ジー」「ブーン」といった不快なノイズ。これも原因は様々です。
- ケーブル類は大丈夫?:ケーブルが古くなっていたり、断線しかかっていたりするとノイズの原因になります。別のケーブルで試してみましょう。
- USBハブを使っていませんか?:特にバスパワーのモデルの場合、電力不足で動作が不安定になり、ノイズが出ることがあります。できるだけパソコン本体のUSBポートに直接接続しましょう。
- ゲインの上げすぎではありませんか?:マイクプリアンプのゲインを上げすぎると、「サー」というホワイトノイズが目立ってきます。適正なレベルに調整しましょう。
- 周辺機器からのノイズ:パソコンの電源や、同じコンセントに繋がっている他の電化製品がノイズ源になっていることもあります(グラウンドループ)。電源タップを変えたり、コンセントの場所を変えたりすると改善することがあります。
- ギターのノイズ:シングルコイルのピックアップを搭載したギターは、元々ノイズを拾いやすい性質があります。照明やPCモニターから離れるとノイズが減ることがあります。
Q. 音が遅れて聞こえる(レイテンシー)
演奏や録音の快適さを損なう遅延問題。以下の方法を試してみてください。
- DAWのバッファサイズを小さくしてみましょう:前述の通り、DAWのオーディオ設定でバッファサイズを小さく(例: 128 samples, 64 samplesなど)すると遅延は減ります。ただし、PC負荷とのトレードオフです。
- ダイレクトモニタリング機能を使ってみましょう:これが最も確実な解決策です。オーディオインターフェイスのダイレクトモニタリング機能をONにすれば、遅延のない音でモニターできます。
Q. ループバックの使い方がわからない
ループバック機能は非常に便利ですが、設定方法がメーカーや製品によって異なります。多くの場合、ドライバーと一緒にインストールされる専用のコントロールパネルソフトウェア上で設定します。「Loopback」や「Mix」といった項目を探し、ONにしたり、どの音をミックスするかを設定したりします。こればかりは製品の取扱説明書を読むのが一番の近道です。メーカーのサポートページに動画での解説がある場合もあります。
Q. スマホやタブレットで使えますか?
製品によっては、iPhoneやiPad、Android端末などでも使用できます。「iOS対応」「iPad対応」などと記載されているかを確認しましょう。ただし、接続には注意が必要です。iPhoneやiPadの場合は、Apple純正の「Lightning – USBカメラアダプタ」などが必要になります。また、スマホやタブレットからの電源供給だけでは電力が足りないことが多いため、セルフパワー駆動のオーディオインターフェイスや、電源供給ポートが付いたUSBハブが別途必要になるケースがほとんどです。使用したいアプリがそのオーディオインターフェイスに対応しているかも、事前に確認しておくと安心です。
自分にぴったりの一台を見つけよう
ここまで、オーディオインターフェイスの役割から選び方、基本的な使い方やトラブルシューティングまで、幅広く解説してきました。たくさんの専門用語が出てきて少し難しく感じたかもしれませんが、重要なポイントは意外とシンプルです。
もう一度、選び方のステップをおさらいしてみましょう。
- 何を、いくつ繋ぎたい? → 入出力の端子の種類と数
- どれくらいの音質が必要? → サンプリングレートとビット深度
- 自分のパソコン環境は? → 接続方式(USB/Thunderbolt)
- 配信や快適な録音がしたい? → 付加機能(ループバック/DSP)
オーディオインターフェイスは、あなたの「音」に関する活動の、まさに「心臓部」となる機材です。高価なプロ向けの機材が、必ずしもあなたの使い方に合っているとは限りません。逆に、安価なモデルでも、あなたの目的を十分に満たしてくれるかもしれません。大切なのは、カタログスペックの数字の大小に惑わされるのではなく、「自分がやりたいことは何か」をしっかりと見据え、それに必要な機能を備えたモデルを冷静に見極めることです。
この記事には、特定の商品名は一つも出てきません。しかし、ここに書かれた知識は、あなたがこれからどんなオーディオインターフェイスを検討する上でも、必ず役立つ普遍的なもののはずです。この記事をあなたの「羅針盤」として、ぜひ、ご自身にぴったりの一台を見つけ出す旅を楽しんでください。あなたのクリエイティブな活動が、最高のサウンドと共にありますように!

