DTM(デスクトップミュージック)やライブパフォーマンスの世界に足を踏み入れると、必ずと言っていいほど耳にする「MIDIインターフェイス」。なんだか難しそうな名前ですが、実は音楽制作の可能性をグッと広げてくれる、とっても便利な機材なんです。でも、「そもそも何をするもの?」「オーディオインターフェイスと何が違うの?」「たくさん種類があるけど、どうやって選べばいいの?」と、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなMIDIインターフェイスに関するあらゆる疑問を解消するため、特定の商品名を一切出さずに、選び方から使い方、トラブルシューティングまで、お役立ち情報だけを徹底的に解説していきます!おすすめランキングや商品レビューは一切ありません。この記事を読めば、あなたにピッタリなMIDIインターフェイスの「選び方の基準」が身につき、自信を持って機材選びができるようになるはずです。さあ、一緒にMIDIインターフェイスの世界を探検しにいきましょう!
MIDIインターフェイスの基本の「き」
まずは、MIDIインターフェイスの役割を理解するために、基本中の基本からおさらいしていきましょう。「MIDI」という言葉の意味が分かれば、MIDIインターフェイスの必要性も自ずと見えてきますよ。
MIDIってそもそも何?
MIDI(ミディ)は、「Musical Instrument Digital Interface」の略で、電子楽器同士が「会話」するための世界共通の「言語」や「ルール」のようなものです。ここでとても大事なポイントは、MIDIは「音」そのもののデータではないということです。
よく「MIDIケーブルで音を送る」と勘違いされがちですが、MIDIがやり取りしているのは「演奏情報」なんです。具体的には、
- どの鍵盤(どの音の高さ)を
- どれくらいの強さで
- どれくらいの長さ
- 弾いたか(または離したか)
といった情報です。まるで、目に見えない超高速なピアニストが、あなたの演奏をそのまま別の楽器に伝えてくれるようなイメージですね。楽譜が「演奏方法を記した指示書」であるように、MIDIも「演奏情報を記録したデータ」と考えると分かりやすいかもしれません。
この「演奏情報」と「音源(実際に音を出す部分)」が別々になっているからこそ、MIDIは非常に柔軟な使い方ができるんです。例えば、ピアノで弾いた演奏情報を、後からヴァイオリンやドラムの音に変える、なんてことも自由自在にできてしまいます。
なぜMIDIインターフェイスが必要なの?
さて、本題のMIDIインターフェイスです。これは、電子楽器が話す「MIDI語」と、パソコンが理解できる「USB語」などを相互に翻訳してくれる「通訳さん」のような存在です。電子楽器(シンセサイザーやMIDIキーボードなど)とパソコンを直接つなごうとしても、お互いの言葉が違うのでコミュニケーションが取れません。そこで、MIDIインターフェイスが間に入って、両者の橋渡しをしてくれるわけです。
具体的には、
- 楽器からのMIDI信号をパソコンが受け取れるUSB信号に変換する
- パソコンからのUSB信号を楽器が受け取れるMIDI信号に変換する
という、双方向のやり取りを可能にします。これにより、パソコンの音楽制作ソフト(DAW)でMIDIキーボードを弾いてソフトウェア音源を鳴らしたり、逆にDAWから外部のハードウェアシンセサイザーを自動演奏させたりできるようになるのです。
「でも最近のキーボードは、USBケーブル1本でパソコンに繋がるよ?」と思った方もいるでしょう。その通りです。最近の多くのMIDIキーボードやシンセサイザーには、MIDIインターフェイス機能が内蔵されており、USB端子が付いています。これを「USB-MIDI」と呼びます。この場合、単体でMIDIインターフェイスを用意する必要はありません。
しかし、それでもMIDIインターフェイスが必要になる場面はたくさんあります。例えば、
- USB端子がなく、昔ながらの丸いMIDI端子(DINコネクタ)しかないシンセサイザーや音源モジュールを使いたい時
- 複数のMIDI機器を同時にパソコンと接続・同期させたい時
- パソコンと楽器の距離が遠く、USBケーブルでは長さが足りない時(MIDIケーブルは長く引き回せる利点があります)
などです。特に、複数のハードウェア機材を連携させて音楽制作をするスタイルの人にとっては、MIDIインターフェイスは必須アイテムと言えるでしょう。
MIDIインターフェイスでできること【具体例】
MIDIインターフェイスが「通訳さん」だということは分かりました。では、その通訳さんを雇うことで、具体的にどんな素晴らしいことが可能になるのでしょうか?ここでは、代表的な活用例をいくつかご紹介します。
パソコンで楽器の音を鳴らす
これが最もポピュラーな使い方でしょう。お気に入りのMIDIキーボードをMIDIインターフェイス経由でパソコンに接続します。そして、パソコンに入っているDAWソフトを立ち上げ、ソフトウェア音源(ピアノ、ストリングス、シンセサイザーなど、様々な楽器の音を出すソフト)を起動します。すると、MIDIキーボードを弾くだけで、パソコンの中からプロクオリティの楽器の音を鳴らすことができます。鍵盤が弾けなくても、DAWのピアノロール画面にマウスで音符を打ち込んでいけば、その通りにソフトウェア音源が演奏してくれます。これは作曲の強力な武器になりますね。
パソコンから外部の音源モジュールをコントロールする
先ほどとは逆のパターンです。往年の名機と呼ばれるハードウェアシンセサイザーや、ラックに収められた音源モジュールなど、パソコンの中だけでは出せない独特のサウンドを持つ機材を使いたい場合に活躍します。DAW上で作ったメロディやコードのMIDIデータを、MIDIインターフェイスを通して外部のハードウェアシンセサイザーに送信します。すると、パソコンが自動でシンセサイザーを演奏してくれるのです。手で弾くのが難しい複雑なフレーズを演奏させたり、曲の途中で自動的に音色を切り替えさせたりといった、人間業とは思えないようなコントロールも可能になります。
複数のMIDI機器を同期させる
MIDIインターフェイスの真価が発揮されるのが、この「同期演奏」です。例えば、
- パソコンのDAW
- ハードウェアのシーケンサー(自動演奏マシン)
- リズムマシン
- アルペジエーター(分散和音を自動生成する機能)付きのシンセサイザー
これらの機材をすべてバラバラに再生ボタンを押したとしても、テンポが微妙にズレてしまい、まともなアンサンブルにはなりません。そこでMIDIインターフェイスの登場です。DAWを親機(マスター)、他の機材を子機(スレーブ)としてMIDIケーブルで接続し、「MIDIクロック」というテンポ情報を送ってあげます。すると、すべての機材がDAWのテンポに完璧に追従し、まるで一つのバンドのようにガッチリと同期して演奏を始めます。これにより、複雑で厚みのあるトラック制作や、ライブパフォーマンスが可能になるのです。
ライブパフォーマンスでの活用
ライブステージでもMIDIインターフェイスは大活躍します。ノートパソコンを持ち込んで、DAWからバッキングトラック(伴奏)を流しつつ、MIDIフットコントローラーを使って足元でシンセサイザーの音色を切り替えたり、エフェクターのパラメータをリアルタイムに操作したり。さらには、照明(DMXという規格をMIDIでコントロールできる機材もあります)や映像と音楽を同期させるなど、アイデア次第でショー全体のクオリティを飛躍的に向上させることができます。MIDIインターFACEは、単なる制作機材にとどまらず、表現の幅を広げるための強力なツールなのです。
MIDIインターフェイスの選び方【完全攻略】
さて、いよいよMIDIインターフェイスの選び方です。ここでは特定の商品をおすすめするのではなく、あなたが自分の環境や目的に合った一台を見つけるための「判断基準」を徹底的に解説します。以下のポイントを一つずつチェックしていけば、きっと後悔のない選択ができるはずです。
まずは接続したい機器をチェックしよう
何よりも先にやるべきことは、手持ちの機材、これから使いたい機材の「端子」を確認することです。当たり前のようですが、意外と見落としがちなポイント。
- MIDI機器側:接続したいキーボードやシンセサイザー、音源モジュールに付いている端子は何でしょうか?昔ながらの丸い5ピンのMIDI IN/OUT/THRU端子ですか?それともUSB Type-B端子でしょうか?
- パソコン側:お使いのパソコンに付いているUSBポートの種類は何ですか?一般的な長方形のUSB Type-Aですか?それとも、最近増えてきた楕円形のUSB Type-Cでしょうか?
これらを把握しておかないと、「せっかく買ったのに接続できない!」という悲しい事態になりかねません。まずは現状把握から始めましょう。
IN/OUTポートの数で選ぶ
MIDIインターフェイスのスペックで最も重要なのが、MIDI INポートとMIDI OUTポートの数です。これは「〇IN/〇OUT」という形で表記されます。
- MIDI IN:楽器からの演奏情報を受け取るための入力端子です。
- MIDI OUT:パソコンから楽器へ演奏情報を送るための出力端子です。
ポート数が多ければ多いほど、たくさんの機材を同時に接続できます。自分の使い方をイメージして、必要なポート数を見極めましょう。
| ポート数 | こんな人におすすめ |
| 1IN / 1OUT |
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| 2IN / 2OUT |
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| 4IN / 4OUT |
|
| 8IN / 8OUT以上 |
|
「大は小を兼ねる」と考えがちですが、使わないポートがたくさんあっても宝の持ち腐れです。まずは自分の現在の機材構成と、近い将来(1〜2年後)にやりたいことを見据えて、少しだけ余裕のあるポート数を選ぶのが賢い選択と言えるでしょう。
接続方式(USBの種類)を確認する
MIDIインターフェイスとパソコンを接続する方式は、現在ほとんどがUSB接続です。しかし、そのUSBにもいくつかの種類があるので注意が必要です。
- USB Type-A:一昔前のパソコンで主流だった、おなじみの長方形の端子です。
- USB Type-B:プリンターなどによく使われている、正方形に近い形の端子です。MIDIインターフェイス本体側によく見られます。
- USB Type-C:最近のパソコン(特にMacBookなど)やスマートフォンで主流の、上下の区別がない楕円形の端子です。転送速度が速く、電源供給能力も高いのが特徴です。
お使いのパソコンのUSBポートがType-Cしかないのに、Type-Aのケーブルが付属したMIDIインターフェイスを買ってしまうと、別途変換アダプタが必要になります。無駄な出費やトラブルを避けるためにも、自分のパソコンのポートの種類に合った製品を選ぶか、あらかじめ必要な変換アダプタを用意しておきましょう。
電源供給方式の違い
MIDIインターフェイスの電源をどこから取るかも、地味ながら重要なポイントです。主に2つのタイプがあります。
- USBバスパワー駆動:パソコンと繋いだUSBケーブルから直接電源を取るタイプです。別途コンセントを用意する必要がなく、配線がスッキリするのが最大のメリット。持ち運びにも便利です。小規模なポート数のモデルに多く見られます。ただし、パソコンのUSBポートの電力供給能力によっては、動作が不安定になる可能性もゼロではありません。
- ACアダプター駆動:付属のACアダプターをコンセントに挿して電源を取るタイプです。安定した電源供給が可能なため、多ポートのモデルや、プロ向けの信頼性が求められるモデルで採用されています。配線が増えるというデメリットはありますが、動作の安定性を最優先するならこちらが有利です。
自宅の制作環境で据え置きで使うのか、それともカフェやスタジオに持ち運んで使うことが多いのか、自分の使用シーンを想像して選ぶと良いでしょう。
無線(ワイヤレス)MIDIという選択肢
最近では、Bluetoothを利用したワイヤレスMIDIインターフェイスも登場しています。ケーブルの煩わしさから解放されるのは大きな魅力です。
メリットは、なんといってもケーブルレスによる快適さ。ステージ上を自由に動き回りながらキーボードを演奏したり、部屋のどこからでもDAWをコントロールしたりできます。しかし、デメリットも理解しておく必要があります。それは「レイテンシー(遅延)」の可能性です。有線接続に比べると、どうしてもわずかながら信号の遅れが発生する可能性があります。リアルタイムでのシビアな演奏には向かない場合もありますが、技術の進歩により、体感できないレベルの製品も増えています。また、接続の安定性やバッテリーの充電といった管理も必要になります。
オーディオインターフェイス一体型も便利
「これからDTMを始めたい!」という方にとって、非常に有力な選択肢となるのが、MIDIインターフェイス機能が搭載されたオーディオインターフェイスです。オーディオインターフェイスは、マイクやギターの音をパソコンに録音したり、高音質でスピーカーやヘッドホンから音を聴いたりするための機材です。多くのオーディオインターフェイスには、おまけのようにMIDI IN/OUTポートが付いています。
マイク録音もしたいし、MIDIキーボードも使いたい、という場合、機材を別々に買うよりも、一体型モデルを1台買う方が省スペースかつ経済的です。まずは一体型モデルから始めて、将来的にMIDI機器がもっと増えてポートが足りなくなったら、専用のMIDIインターフェイスを買い足す、というステップアップも良いでしょう。
対応OSは必ずチェック!
最後に、絶対に確認しなければならないのが「対応OS」です。お使いのパソコンのオペレーティングシステム(Windows 11, macOS Sonoma, iOS 18など)に、そのMIDIインターフェイスが正式に対応しているか、必ずメーカーの公式サイトで確認してください。
特に注意が必要なのは、
- 発売から年数が経っている古い製品を中古で買う場合
- 最新のOSにアップデートした直後
です。「Windows 10までは動いたけど、11にしたら認識しなくなった」「新しいMacを買ったらドライバーが対応していなかった」といったトラブルは頻繁に起こります。メーカーが提供する「ドライバー(機材をOSに認識させるためのソフトウェア)」の更新状況などをしっかりチェックする癖をつけましょう。
MIDIインターフェイスの使い方【接続と設定】
自分に合ったMIDIインターフェイスを手に入れたら、次はいよいよ接続と設定です。難しく考える必要はありません。手順通りに進めれば、誰でも簡単にセットアップできます。
物理的な接続方法
まずはケーブルを繋いでいきましょう。ここで最も重要なルールは、「OUTからINへ」です。信号が出ていく側(OUT)と、信号を受け取る側(IN)を正しく繋ぐ必要があります。水の流れをイメージすると分かりやすいかもしれません。蛇口(OUT)からホースを通ってバケツ(IN)に水が注がれるのと同じです。
基本的な接続パターン1:MIDIキーボード → パソコン
- MIDIキーボードの「MIDI OUT」端子と、MIDIインターフェイスの「MIDI IN」端子をMIDIケーブルで接続します。
- MIDIインターフェイスとパソコンをUSBケーブルで接続します。
これで、キーボードの演奏情報がパソコンに送られるようになります。
基本的な接続パターン2:パソコン → ハードウェアシンセサイザー
- MIDIインターフェイスの「MIDI OUT」端子と、シンセサイザーの「MIDI IN」端子をMIDIケーブルで接続します。
- MIDIインターフェイスとパソコンをUSBケーブルで接続します。
これで、パソコンのDAWからシンセサイザーを鳴らせるようになります。
基本的な接続パターン3:キーボードで演奏し、パソコンを経由してシンセを鳴らす
- MIDIキーボードの「MIDI OUT」→ MIDIインターフェイスの「MIDI IN」
- MIDIインターフェイスの「MIDI OUT」→ シンセサイザーの「MIDI IN」
- MIDIインターフェイスとパソコンをUSBで接続
この形にすれば、キーボードの演奏をDAWに録音しつつ、その信号をそのままシンセサイザーに送って音を鳴らす、といった複雑なルーティングも可能になります。
ドライバーのインストール
パソコンに新しい機器を接続した際、その機器を正しく動作させるために必要なソフトウェアが「ドライバー」です。MIDIインターフェイスによっては、このドライバーのインストールが必要な場合があります。
- ドライバーが必要な場合:製品に付属のCD-ROMや、メーカーの公式サイトから、お使いのOSに合ったドライバーをダウンロードしてインストールします。インストール手順は製品のマニュアルに従ってください。
- ドライバーが不要な場合:最近の製品には「クラスコンプライアント」に対応しているものが多くあります。これは、OSに標準で備わっている汎用ドライバーで動作するため、USBケーブルで繋ぐだけで特別なインストール作業なしにすぐに使えるというものです。非常に手軽で便利ですね。
自分の購入した製品がどちらのタイプなのかは、必ずマニュアルや公式サイトで確認しましょう。
DAW(音楽制作ソフト)での設定
最後に、お使いのDAWソフトでMIDIインターフェイスを使えるように設定します。どのDAWでも基本的な流れは同じです。
- DAWソフトを起動します。
- 「環境設定」「設定」「オプション」などのメニューを開きます。(DAWによって名称は異なります)
- その中に「MIDI設定」「MIDIデバイス」といった項目があるので選択します。
- 入力(Input)デバイスの一覧、出力(Output)デバイスの一覧が表示されます。
- その一覧の中に、接続したMIDIインターフェイスの名前が表示されているはずです。そのデバイスを「有効」または「アクティブ」にするチェックボックスをONにします。
これで設定は完了です!DAWのトラックを作成し、入力元としてMIDIインターフェイスを指定すれば、MIDI信号の送受信ができるようになっているはずです。
よくあるトラブルと解決策【困ったときはココ!】
「ちゃんと繋いだはずなのに、うんともすんとも言わない…」MIDIを扱い始めると、誰しも一度は経験する壁です。でも、慌てないでください。ほとんどのトラブルは、基本的なチェックで解決できます。困ったときは、以下の項目を上から順に確認してみてください。
認識しない・反応しない
最も多いトラブルがこれです。まずは冷静に、原因を一つずつ切り分けていきましょう。
- ケーブルの接続は正しい?:基本中の基本ですが、意外と多いミスです。「OUTからINへ」の原則が守られていますか?MIDIケーブルのOUTとINを逆に挿していないか、もう一度確認してみてください。USBケーブルが奥までしっかり挿さっているかもチェックしましょう。
- 電源は入っている?:MIDIインターフェイス本体の電源ランプは点灯していますか?ACアダプター駆動のモデルなら、アダプターがコンセントにしっかり挿さっているか確認します。USBバスパワーの場合は、パソコンの電源が入っていることが大前提です。
- USBポートを変えてみる:パソコンの別のUSBポートに挿し替えてみてください。USBハブを使っている場合は、一度ハブを介さずに、パソコン本体のUSBポートに直接接続してみましょう。電力不足が原因で動作が不安定になっている可能性があります。
- パソコンを再起動してみる:「困ったときの再起動」は、今も昔も有効な手段です。パソコンとMIDIインターフェイスを再起動するだけで、あっさり解決することがあります。
- ドライバーは正しくインストールされている?:デバイスマネージャー(Windows)やシステム情報(Mac)で、MIDIインターフェイスがエラーなく認識されているか確認します。もし「!」や「?」マークが付いていたら、ドライバーが正しくインストールされていません。一度ドライバーをアンインストールし、再度インストールし直してみてください。
- DAWの設定は正しい?:前の章で解説したDAWのMIDI設定画面で、お使いのMIDIインターフェイスがちゃんと有効になっていますか?見落としがちなポイントなので、再確認しましょう。
音が遅れて聞こえる(レイテンシー)
鍵盤を弾いてから、一瞬遅れて音が鳴る現象。これを「レイテンシー」と呼びます。これが大きいと、まともに演奏することができません。この主な原因は、パソコンが音を処理するのに時間がかかっていることです。
- バッファサイズを調整する:DAWのオーディオ設定に、「バッファサイズ(Buffer Size)」や「サンプル(Samples)」という項目があります。この数値を小さくすると、レイテンシーは減少します。ただし、小さくしすぎるとパソコンへの負荷が大きくなり、音が途切れたりノイズ(プチプチ音)が発生したりします。演奏や録音をするときはバッファサイズを小さくし、ミックスや編集作業をするときは大きくする、といった使い分けが基本です。
- ダイレクトモニタリング機能を使う:オーディオインターフェイスに搭載されている機能ですが、パソコンを経由する前の音(入力された音)を直接ヘッドホンなどに出力することで、遅延ゼロの音を聴きながら演奏できます。MIDI演奏のレイテンシーとは少し話が違いますが、ボーカルやギターの録音時には非常に有効な機能です。
MIDI信号がループしてしまう(MIDIループ)
意図しない音が出続けたり、音が無限に重なって暴走したりする現象です。これは、送ったMIDI信号がぐるっと一周して、また自分自身に戻ってきてしまう「MIDIループ」が原因であることが多いです。
- DAWのMIDI THRU設定を確認する:多くのDAWには、MIDI INから入ってきた信号を、そのままMIDI OUTに送り返す「ソフトウェアMIDIスルー」のような機能があります。これがONになっていると、[キーボード → インターフェイスIN → DAW → インターフェイスOUT → 音源モジュール] という経路の他に、[キーボード → インターフェイスIN → DAW → (スルー機能) → インターフェイスOUT → キーボードIN] という意図しないループが生まれてしまうことがあります。DAWの設定で、不要なMIDIスルー機能はOFFにしましょう。
- 機器の接続を見直す:物理的な接続でループが起きていないか確認します。例えば、音源モジュールのMIDI THRU端子から出たケーブルが、何かの間違いでシステムの入力側に戻ってきていないか、などです。
ノイズが乗る
MIDI自体はデジタル信号なので、MIDIが原因でオーディオ的なノイズ(ジー、ブーといった音)が乗ることは基本的にはありません。ノイズの原因は、オーディオ信号の経路や電源周りにあることがほとんどです。
- USB周りを確認する:前述の通り、USBハブを使わずにパソコン本体のポートに直接繋いでみましょう。また、別のUSBケーブルに交換してみるのも有効です。
- 電源のグラウンドループを疑う:パソコンやオーディオインターフェイス、スピーカーなど、複数の機材が別々のコンセントから電源を取っている場合、アース(グラウンド)の電位差によって「ブーン」というノイズが発生することがあります。これをグラウンドループと呼びます。すべての機材を一つの電源タップから取るようにすると、改善される場合があります。
もっと知りたい!MIDIインターフェイス応用編
基本的な使い方をマスターしたら、もう少し踏み込んでみましょう。MIDIインターフェイスに搭載されている便利な機能を知ることで、さらに制作の幅が広がります。
MIDIマージ(MIDI MERGE)機能とは?
マージ(Merge)とは「併合する」という意味です。その名の通り、複数のMIDI INポートから来たMIDI信号を、一つにまとめて特定のMIDI OUTポートから出力する機能です。例えば、
- MIDIキーボードからの演奏情報
- リズムマシンからのドラムパターン情報
この2つのMIDI信号をマージして、1台の音源モジュールに送れば、キーボードでメロディを弾きながら、同時にリズムマシンで鳴っているドラムの音もその音源モジュールで鳴らす、といったことが可能になります。複数のコントローラーを同時に使って、一つの音源を操りたい場合に非常に便利な機能です。
MIDIスルー(MIDI THRU)端子の活用法
多くのMIDI機器やインターフェイスには、「IN」「OUT」の他に「THRU(スルー)」という端子が付いていることがあります。これは、MIDI IN端子に送られてきた信号を、そのまま何も加工せずにオウム返しのように出力するための端子です。
このTHRU端子を使うと、「デイジーチェーン(数珠つなぎ)」と呼ばれる接続ができます。例えば、1つのMIDI OUTポートから、複数の音源モジュールをコントロールしたい場合、
PC → インターフェイスOUT → 音源1のIN / 音源1のTHRU → 音源2のIN / 音源2のTHRU → 音源3のIN…
というように、次々と信号を受け渡していくことができます。これにより、インターフェイスのOUTポートが一つしかなくても、複数の機器を鳴らすことが可能になります。ただし、数珠つなぎにする機器が多すぎると、わずかな信号の遅延が蓄積していく可能性があるので注意が必要です。
SMPTEタイムコードとの同期
少し専門的になりますが、一部の高性能なMIDIインターフェイスには、SMPTE(スムプティ)タイムコードという信号を入出力する機能が備わっています。これは、映像の世界で使われる「時間情報」を記録した信号です。
この機能を使うと、映像の再生時間とDAWの再生時間を完璧に同期させることができます。映画やアニメ、ゲームのBGMを制作する「フィルムスコアリング」と呼ばれる作業では必須の機能です。映像の特定のシーンに合わせて、ドンピシャのタイミングで効果音や音楽を鳴らす、といった精密な作業が可能になります。
まとめ
今回は、MIDIインターフェイスについて、その役割から選び方、具体的な使い方、そしてトラブルシューティングまで、幅広く掘り下げてきました。もう一度、大切なポイントをおさらいしておきましょう。
- MIDIインターフェイスは、楽器の「演奏情報」をパソコンとやり取りするための「通訳さん」。
- 選び方の最重要ポイントは、接続したい機材に合わせた「IN/OUTポート数」。
- USBの種類、電源方式、対応OSなど、自分の制作環境をしっかり把握することが失敗しないコツ。
- トラブルが起きたら、慌てずに「ケーブル」「電源」「ドライバー」「DAW設定」を一つずつチェック。
一見すると地味な機材かもしれませんが、MIDIインターフェイスは、あなたの創造力を解き放ち、音楽制作の自由度を格段に上げてくれる、まさに縁の下の力持ちです。ソフトウェア音源だけでなく、個性豊かなハードウェアシンセサイザーも制作に取り入れたいと思った時、その真価を実感できるでしょう。
この記事には、特定の商品名は一つも出てきません。しかし、ここで解説した「選び方の基準」という名の物差しがあれば、無数にある製品の中から、今のあなた、そして未来のあなたにとって最適な一台がどれなのか、きっと見えてくるはずです。この記事が、あなたのDTMライフをより豊かにするための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。


